エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「でもそれは事実ですから。海老沢さんのミスを私がなおしたり、あちこちに訂正をしに行ったり大変なんです」


呆れて言葉もない。


「海老沢さんは俺の秘書になって一年経ったが、これまでミスは一度もない。その彼女が新人のキミに訂正してもらうような間違いをするわけがないだろう」
「だ、だって本当なんです。この前だって――」
「もういい。キミと話していると頭が痛くなってくる」


へこたれない彼女を制し、頭を押さえながらドアに手を掛ける。カードキーをかざして開錠した。


「明日はこの地域の病院の視察があるが、キミはショッピングでもしていたらいい」


英語が話せなくて右往左往していた彼女が、ひとりで買い物ができるかどうかは怪しいところだが。
冷たい態度なのは重々承知のうえ。だが、楓を貶めたのに比べたら手緩いくらいだ。

(まぁ楓の信用も評価も、そのくらいで落ちるものではないけど)

雅史は立ち尽くす芹菜の前でドアを閉めた。
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