エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「はい、そのせいで箸を落として。一度、検査を勧めてみたほうが」
「わかった。そうしよう」


雅史は深く頷き、楓に改めて体を向けた。


「じゃ、今度こそ楓の話だ」


待ちきれない様子で先を促す。


「来客だと受付から連絡をもらって、行ってみたら英太さんが――」
「〝英太さん〟?」


下の名前で呼んだのが引っ掛かったのか、雅史が目を細める。


「さっきも気になったけど、昔から知ってる男なのか? やけに親しげだったよな」
「高校時代、私の家庭教師だったんです」


雅史は楓の顔を覗き込み、なにか見極めるかのように見つめた。


「それだけ?」
「……それだけ、ではないです」
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