エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
ごまかせる気がせず素直に白状する。
「好きだった?」
さらに突っ込まれてドクンと鼓動が跳ねた。
思わず目を逸らしたが、その視線も捕まる。
「そのときは……好きでした」
「付き合っていたと」
嘘はつけずに頷いた。
雅史からただならぬ不穏な空気が漂ってくる。
「やっぱり出先で聞かなくて正解。ものすごく気分が悪い」
「昔の話ですから」
「今は、楓の父親が推す結婚相手だ」
それを言ったら、芹菜は雅史の父親が推している結婚相手。でも――。
「私が今好きなのは雅史さんです」
決して英太ではないし、ほかの誰でもない。
芹菜のもとにもいってほしくない。
雅史は困ったように笑い、楓を引き寄せた。