エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「石川さんとは、アメリカでなにもなかったんですよね?」
「あたり前だ。言っただろう? 睡眠薬を飲まされたと。俺を信じられない?」
「ごめんなさい。信じられないわけじゃないんです。でも……」
衝撃的なものを見せられたため、ずっと心の中にわだかまりがあったのは事実だ。
「俺こそごめん。楓につらい想いをさせているのも知らずに。楓が俺を問い詰められないように彼女が仕向けたのはわかってる。でももう、そんな想いは二度とさせないから」
雅史の強い眼差しに頷き返す。
「楓、改めて言わせてくれ。結婚しよう」
二度目のプロポーズだった。
誰の反対もない。亡くなった母も願った、心から愛する人のプロポーズ。
「はい」
この二カ月半の間にあった出来事が走馬灯のように蘇る。
甘い一夜を過ごしたあとの試練は、ふたりが幸せな瞬間を迎えるためのものだったと今なら思えた。
これからは雅史とふたりの未来についてだけ考えればいい。
それだけで途方もない幸せを感じた。