エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

妻が亡くなってから本当の夫婦になれたようだ。

慎一と静香夫婦も、長年の別居を解消し、今はふたりで暮らしている。

雅史と朋久の会話のタイミングをみて、バッグから万年筆を取り出す。
朋久に「お願いします」と差し出すと、菜乃花が「楓さんたち、なんかいいな」と微笑んだ。


「いいってなにが？」


雅史が目を瞬かせて聞き返す。


「すごく自然。雅史さんの呼吸に合わせた動作というか、以心伝心？　絶妙なコンビネーションが」
「楓は優秀な秘書でもあるからね」
「優秀なんて大袈裟です」


褒められたのが照れくさくて即座に訂正する。


「いや、楓の右に出る秘書はいない」
「はいはい、ご馳走様」


楓の照れなどお構いなしに雅史がさらに称えたため、朋久は半分あきれ顔だ。