エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「じゃ公私共に雅史さんのそばにいるんですね」
「そうなります」
「ちょっと羨ましいかも」
「菜乃は俺の秘書は嫌がってるじゃないか」


羨望の眼差しを向ける菜乃花に朋久が茶々を入れる。


「そうだけど。でもたまにならいいかも」
「なんだそれ」


朋久は笑いながら菜乃花の髪をくしゃっと撫でた。


「ちょっと朋くん、髪がぐちゃぐちゃになっちゃうから」
「乱れたくらいがちょうどいい」
「もう、なにそれ」


とても仲がいい夫婦だ。

(私たちもそんなふうになれるかな……)

微笑ましいふたりを前に、希望に満ちた未来を夢見る。ふと隣から感じた視線に顔を向けると、雅史が優しい目をして楓を見つめていた。

この人とこの先の未来をずっと一緒に。

仲良くじゃれ合う朋久たちに隠れて、楓たちはそっと手を握り合った。

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