エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
エピローグ
厳かなパイプオルガンの音色が止み、耳に心地のいい神父の声が眩い光に満ちたチャペルにすーっと溶けていく。
「では、誓いのキスを」
純白のベールを持ち上げるのは、いつにも増して華麗な姿の雅史である。
整髪料でしっかり整えた髪も、理知的な相貌も、まるで童話から抜け出てきた王子様そのもの。
見目麗しい男が、今まさに神に永遠の愛を誓い合った楓の夫である。
これまで何度もキスはしてきたのに、神聖な場所のせいか鼓動がありえないスピードを上げていく。
ゆっくり顔を近づけてきた雅史と唇が重なる。
「愛してる」
唇を離す間際、雅史は誰にも聞こえないほど小さな声で囁いた。
あの夜、楓が覚悟をもって雅史と食事をしなければ、こんなにも幸せな時間はなかったかもしれない。
雅史と出会い、その夜を迎えたからこそ、お互いの両親の愛を取り戻せた。