エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
くっきりとした二重瞼の優しげな目元に通った鼻筋は、老いも若きも女性を虜にする甘いマスク。雅史に会いたいがため、なにかと理由をつけて診察予約を取りつけようとする患者がいるのは困っている点だ。
中には娘や孫の婿に所望する年配の患者もいて、あまり邪見に扱えないため色男とは大変なものだなと同情するときがある。
「以上のような観点から、右の横頚静脈洞からのアプローチで治療を進めたいと考えております。なにか質問はありますか?」
ひと通り説明を終えた雅史がメンバーの顔をざっと見回すと、助手として執刀予定の東野が手をあげた。雅史のほうがふたつ年下だが、経験値は上である。
「神楽先生、一点だけ確認をよろしいでしょうか」
雅史が手のひらを上にして、どうぞと先を促す。
「左の内頚動脈からのアプローチも可能かと思うのですが、その点はいかがでしょう」
「こちらをご覧いただきますとおわかりになるかと思いますが、左のS状静脈洞が……」
雅史の言葉に合わせて楓が画像を即座に変更すると、みんなの視線がプロジェクターに注がれる。雅史はさらに説明を加えながら、新たにあがる質問にも淀みなく的確に答えていった。