エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
想いの封印は鍵つきで
翌朝、空が白みはじめた頃、体に巻かれた雅史の腕をそっと外し、楓はベッドを静かに抜け出た。
飽きもせずに抱き合ったあと、雅史は楓を腕の中に閉じ込めて眠りについたが、楓は残されたふたりの貴重な時間を眠りに費やしたくなかった。
彼の寝息を聞きながらまどろみ、夜が明けるまで雅史のぬくもりを感じていた。
パウダールームに脱いだままにしていた洋服に着替え、彼を起こさないように部屋を出る。
夢のような時間はもう終わり。願いが叶ったのだから、これ以上を望んではいけない。
ロビーはホテルのスタッフ以外に人の姿はなく、音もなく静かな時を刻んでいた。
フロントで雅史の部屋へのモーニングコールをお願いし、悪いことをしているわけでもないのにコソコソと足早にエントランスを出てタクシーに乗り込む。
街もまだ覚醒の途中。ゆっくり明けていく東の空が心と裏腹にやけに綺麗で、胸が苦しくなった。
マンションに着き、シャワーを浴びようとバスルームに入ってドキッとする。鏡に映った自分の体に、無数の赤い花びらが散っていた。
絶対に違うのに、まるで〝俺のもの〟と主張しているように錯覚する。