エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
どんな夜を過ごそうが身支度を終えて出勤すれば、またいつも通りの一日がはじまる。
挨拶を交わし合いながら脳神経外科のナースステーションや医局を通り越し、雅史の部屋のドアを開けた。
(先生、ちゃんと起きられたかな)
ホテルにモーニングコールをお願いして逃げるように帰ってきてしまったが、無責任だったかもしれないと後悔だ。
なにかあったときのために業務用以外にプライベートのナンバーも交換しているが、連絡を躊躇い放置していた。
しかしこの一年、雅史は遅刻せず、それ以前にも時間にルーズな話も聞いていない。きっと大丈夫だろうと、祈るような思いで部屋の掃除を済ませる。
(先生が出勤してきたら、何事もなかったように接しよう。ううん、接さなくてはダメ)
自分に何度も言い聞かせ、デスク周りの整理をしているときだった。
ドアが開く音に心臓が飛び上がる。
「お、おはようございます」
出だしは口ごもったが、立ち上がってなんとか挨拶をした。うまく話ができるだろうかと、楓を緊張が包み込む。