エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「半年前だったかな。楓さんはどうしてるかと気になっていたけど忙しくてね」
ふわりと笑った顔が当時と重なる。
出会いは楓が高校二年生のとき。大学生四年生だった英太は年齢よりずっと落ち着いた、物腰のやわらかい青年だった。
当時母親を亡くして塞ぎ込んでいた楓を懸命に励まし、寄り添ってくれたのはほかでもなく英太だ。
心にできた隙間を埋めるように恋心が芽生えるのは必然。勉強だけでなく、キスもその先も教えてくれたのは英太だった。
「忙しい英太くんなら仕方がないだろう。なにしろ『プライムシー』を背負って立たなければならないからね」
「それはもう少し先の未来ですけどね。僕もまだまだです」
芳郎の言葉に謙虚な姿勢を見せる。
英太は日本でも指折りの医療機器メーカー、プライムシーの御曹司である。
神楽総合病院はライバル企業の医療機器を使っているため、そことの繋がりはないが。
英太は大学を卒業後、一度はプライムシーに入社したが、勉強のために他企業の海外支社へ赴任。別れはそのときだった。