エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「英太くんをここへ呼んだのはほかでもない。結婚相手として楓に改めて紹介するためだ」
「け、結婚相手って、ちょっと待って、お父さん」
「父さんはもう十分待ったぞ? 四年の猶予を与え、その期限すら過ぎている」
芳郎が楓を一刀両断する。
「英太くんなら相手として申し分ないし、楓にとってもいい話じゃないか」
当時のふたりの関係を知っている芳郎は、問題ないと言いたげだ。むしろ喜ばしい相手だと喜色満面。楓に連絡をよこしたときに、どことなく機嫌がよかった理由が今わかった。
楓と付き合っていたとき、プライムシーはまだ中小企業の位置づけだった。そのため芳郎は『英太くんとの結婚はあきらめなさい』と再三にわたり楓に忠告していた。
それなのにここ数年のうちに大企業へと急成長を遂げたため、考えを改めたのだろう。
「急にそんな話をされても」
「急ではないだろう? 以前からそういう約束だったはずだ」