エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
芳郎の言う通りのため返す言葉もない。そもそも芳郎は、娘の楓の幸せを思うからこそ英太を相手として連れてきただろうから。
一緒になりたいと願っていた相手なら、楓も喜ぶだろうと。
「院長、その話はまた改めてしませんか? 今夜は楓さんと再会したお祝いの席にしたいです」
楓が困っているのを察してか、英太がやんわりと制す。
芳郎も異論がないようで、「そうだな」とすぐに応じた。英太は昔から芳郎の扱いがうまい。
「僕が海外赴任してからの数年間、楓さんはどうしてた?」
「私は……」
優しい調子で問いかけられ、ぽつぽつと話しはじめる。ゆっくりサーブされる料理を楽しみながら、楓は英太の質問にひとつずつ答えていった。