エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
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院長に呼び出されてから二週間と少しが過ぎ、六月に入った。再び慎一に呼ばれて院長室へやってきた雅史は、ソファに座る女性に気づき足を止める。
「雅史、こちらは石川製薬の社長のお嬢さんだ」
慎一が雅史の結婚相手にと考えている女性である。
一年ほど前、慎一に連れ出された医療関係のパーティーで会ったが、それきりだ。
向かいに座る慎一に紹介されて彼女が立ち上がり、小さな花柄のワンピースがふわりと揺れる。雅史に向かって頭を下げた。
「雅史さん、お久しぶりです。芹菜です。覚えていらっしゃいますか?」
緩やかにカールした髪が胸元で揺れる。令嬢らしく品があり、ぱっちりした目をした華やかな顔立ちだ。
しかし、彼女がなぜここに。
「院長、どういうことですか」
病院で見合いというわけでもないだろう。