エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「挨拶もなしに失礼じゃないか」
「院長、お気になさらないでください。雅史さんもきっと驚かれたのでしょうから」
芹菜がすかさずフォローすると、慎一は小さな息をひとつついて溜飲を下げた。
「芹菜さんには、しばらく雅史の秘書として働いてもらおうと考えている」
「秘書? それなら必要ありません。海老沢さんがいますから」
「彼女の補佐としてでもいい。雅史の仕事ぶりを見たいという芹菜さんたっての希望なんだ」
唐突すぎる話に眉根を寄せて反論するが、慎一はまったく意に介さない。
「総務にも医局にも、話は通してある」
すでにそこまで手回ししていたとは、なんたる速さなのか。
「雅史さん、ぜひお願いしますと私からわがままを申し上げたんです。夫になる人の働く姿を近くで拝見させていただきたくて」
「キミと――」
「まぁ、そういうわけだ」