エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
〝結婚するつもりはない〟と言おうとしたが、慎一に遮られた。雅史の意思は芹菜には伝わっていないようだ。
「芹菜さん、少々わがままなところのある息子ですが、大目に見てやってくださいね」
「はい、もちろんです」
「院長、勝手に話を進めないでください」
当事者である雅史を置き去りにした決定事項に反発したが、「芹菜さんがいる前でやめなさい」と慎一に制され口を噤む。今ここで騒ぎ立てても無駄だろう。
「では私はこの後、来客があるから」
例のごとく、秘書の田所が現れる。ドアを大きく開いて待つ姿に急かされ、雅史は渋々院長室を出た。
「雅史さん、私のわがままに付き合せてごめんなさい」
隣を歩く芹菜に軽く右手を振って〝いや〟と答えるが、本音では勘弁してくれという気持ちだ。
「ただひとつだけ言っておきますが、私はあなたとの結婚は考えていません」
「えっ」