エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

ぴたりと足を止めた彼女に構わず歩き続ける。結婚の意思がないのはきっぱり伝えておくべきだ。その気もないのに思わせぶりにしたくない。


「雅史さん、今はそれでもいいです。でも、私と結婚したいと思ってもらえるようがんばりますね」


小走りで雅史に追いついた芹菜が小首を傾げる。肩を軽く上げ、はにかんだ笑みを浮かべる芹菜だが、雅史にはまったく響かない。

楓しか見えていないのはもちろん、どことなく〝この角度でこうすればノックアウトできる〟と自覚しているようにも見えて興ざめする。

雅史は外国人がするように両手を上に向けて小さなため息をついた。
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