魔女と恋と君。
聞いちゃった。両親と姉ちゃんが話しているところを。
「柚は…もう無理だ。柚のことは、もう児童養護施設に預けよう。」
「お母さんも…賛成するわ。」
「…私は反対する。だって、だって世界に一人だけの弟なんだよ!?捨てられるわけない!柚がいなくなったら私はどう生きていけばいいの!?」
姉ちゃんが泣いている。僕のために泣いている。お母さんも泣きながら慰めている。「ごめんね、ごめんね、」と、つぶやきながら。
ダメじゃんか。女の子を中しちゃダメだって、父さんが一番言ってたじゃんか。
でも、僕は…そこから一歩も動くことができなかった。自分が捨てられそうになっているという現実と、その意見を出した父さんが嫌いになった。
動けよ。 動けよ。僕の足。 そう念じて足を動かそうとしても、1mmも進まない。
動けよ。目の前で大事な姉ちゃんが泣いてんだぞ。ダメだよ。
「柚はね、杏奈ちゃんのことで落ち込んでるだけだよ、」
杏奈。その名前を聞くだけで頭が痛くなる。落ち着け。落ち着け自分。
「」
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