俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

『……お久しぶりです。数年ぶりですね』

 先に話しかけてきたのはこはるからだった。母親に諭される形で嫌々挨拶をしているのが目に見えており、俺の中では不満が膨らむ。

『そうだな。相変わらず子供っぽいまま、全然成長してないな』

 口から出るのは思ったこととは正反対の言葉。

 俺は今まで生きてきた中でお世辞抜きで他人を褒めることなどしたことがなかった。むしろ俺は褒められる側になることが多く、相手に言葉を褒めるという状況の場合は褒めるというより煽てて場を盛り立てることを目的としていた。

 放蕩息子でも一応は月ノ島ノ後継者だ。重要なパーティーにはたびたび出席することがあり、さすがにその時ばかりはボロを出さぬようお世辞ばかりを口にしていたのだ。

 だからこそ自分の本心を相手に伝える方法などまるで分からない。
 俺の言葉に対しこはるは子供っぽく顔をむくらませたのがまた面白く、俺の心をくすぐったせいでより揶揄う言葉ばかり溢れてしまうという悪循環に陥るのだ。
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