俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
こはるはすでに風呂上がりらしく、頬が上気していた。髪の毛は濡れており、肩にかけられたタオルで拭っている最中のようで。
俺は後ろ手に隠した花束を渡そうとするも、手が震える。どうやら慣れないことに緊張しているようだった。
黙ったまま立ちすくんでいる俺を不思議に思ってか、こはるはぱたぱたとスリッパの音を鳴らして近づいてくる。
「……どうしたんですか?」
「ああ…………これやる」
一言述べて花束を突き出す。
その勢いに紙がくしゃりと音を立て、花びらが揺れた。
それを見たこはるは目を丸くして花束を見つめ、それから視線を俺へと動かす。黒い双眸は真っ直ぐと俺を見つめる。
そして次の瞬間、ほろりと目端から雫がこぼれ落ちた。涙だとわかり、その事実に俺はギョッとする。