俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
「…………っ」
ふと扉に視線を向けた私は息を呑んだ。
見覚えのある人物が視界に映ったからだ。彼女はたった今ここへ来たばかりのようで、周りのスタッフや共演者たちに「おはよう、よろしく」と挨拶をしていた。
その姿を見ながら、自然と口からぽつりと溢れる。
「…………お母さん」
そう。
この映画には母親である花宮いつきが出演する予定だった。
私が主演に抜擢された大きな理由の一つに花宮親子の共演というのがあった。だからこの映画の制作自体、私と母を共演させるために作られたと言っても過言ではないのだ。