俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
今回母との共演する時間はそう長くない。私ではなく共演する遠藤の母親役だからだ。共にカメラへ映る瞬間は台本通りならば一度限りで、それも最終話のクライマックス後のシーンだけだった。
挨拶を終え、撮影監督やプロデューサーの話し、演技についてのアドバイスなど様々なことを教わった私は次の仕事現場へ向かう時間となった。
今日は細々とした打ち合わせのみで、本格的な撮影に入るのは3日後からだ。
すでにスタッフや演者の半数はあとにしており、残っているのは少数だつた。母もすでに次の仕事へ向かうために退出していった。現在は周囲には後片付けをするスタッフの方々ばかりだ。
「花宮! 帰るのか?」
声をかけられて振り返ると遠藤がこちらを伺っていた。質問に対して頷くと、「そっか」と零す。そのとかの表情がどこか翳っていた様に思うのは気のせいだろうか。