俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
「…………っ、く」
ぽろりと頬に雫が伝う。
それは手で拭っても拭っても止まることなく、瞳を潤ませながら俯いた。鼻の奥がじんとしびれを訴え、肩を震わせた。
思わず身体の力が抜け、その場に座り込む。
「掃除……しなきゃ」
視界に割れた茶碗が入り、立ち上がろうとするも難しかった。血の気が引き、その場でうずきそうになる。口元を押さえ、呼吸を荒げた私はただひたすら気持ち悪さが過ぎていくのを待った。
連日の仕事で疲労が溜まっているのだろう。その上今日の出来事で心も乱されて、心身ともに弱っているのかもしれない。
幸い明日は撮影もなく、自宅でゆっくりと身体を休めることが出来る。
なんとか体に力が戻り、立ち上がった。
先ほどスマートフォンが鳴っていたことを思い出し、置いてあるリビングへ向かう。
画面には着信ありと表示されており、連絡主をチェックすれば香澄からだった。