俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

 撮影が終わり、私は遠藤のものへ足を向けた。本日の撮影は私の方が現場入りの時間が早く、なかなか話すタイミングが合わなかったのだ。

「……遠藤くん」

「花宮…………」

「この後少し時間取れない? ……10分程度でいいの」

 そう告げた私に対し、どこか寂しそうに笑った遠藤は了承の意を伝えてくる。私はお礼を言い、その他に何を話すわけでもなくその場から離れた。
 ……下手な情けをかけるのはお互いによくないから。

 着替え終わったのは私の方が早かったみたいだ。遠藤は駆け足でやってきて、「遅れてごめん」と告げた。

「全然待ってないから大丈夫」

「そっか」

 会話がうまく続かないのは、互いにこのあと話すことがあらかじめ分かっているからだろう。
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