俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
「ど、どういうことですか、団長! どうして解散になるんですか。お客さまだって足を運んでくださっていますし、春の公演を目前に解散するなんて……」
滑らかな口調で詰め寄る私はいつにもなく動揺していた。
元々口数の多い方でない私がここまで焦燥感に駆られて言葉数が増えるのは稀なことだろう。
団長に詰め寄っても仕方がないと分かりながらもあまりの事実に自分を止める術など思いつかなかった。
「花宮くん、そう言ってくれるのは嬉しいんだが。……実はね、不景気で……昨年から赤字続きでこのまま劇団を維持し続けるのは困難なんだ……どうか分かってくれ」
私は団長の言葉に顔を歪ませる。
彼もまた、劇団を心の底から愛している一人であった。それなのに。
5年間も在籍した劇団の解散を受け止めきれなかった。だが、それも現実なのだ。