俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
「なんだ? 現場の空気が意外と賑やかで驚いたか?」
すでに監督は撮影準備のためこの場から去っており、今は玲二と二人だけだった。彼の言葉に不本意ながら頷く。
海外ロケを急に伝えてきた件に加え、男女の関係になってしまった晩のことでここまでくる途中意図的に避けてしまっていた。どう接すればいいのか計りかねていたせいもある。
私の気持ちに気付いていないのか、玲二は以前と変わらず接してくる。
「まあ最初は監督もあまり乗り気ではなかったんだがな」
「……やっぱりそうだったんですね。でも、最初はってことは……」
「今はそうではないってことだ」
玲二は用意されていた椅子に腰掛け、ふてぶてしく足を組む。
この現場の中で、玲二は監督と同じくらいの発言力を持っているようだった。
どうやら彼は経営管理本部という部署の専務を務めているらしく、この『ルナトーン』の一大改革のすべてを一任されているとのことだ。
そのために『ルナトーン』の広報の一環でもあるこのロケにも付き添うこととなったらしい。