初恋は海に還らない
本もそこそこ売れているらしく、先日担当さんから重版の連絡が来た。
まさか自分が作家になるなんて、洸に出会う前は想像もしていなかったのに、不思議なものだ。
「都、着替えたら行こう。朝飯は行きながらでいいよな」
「そうする」
理玖が部屋を出ていき、やっと静かになる。後五分くらい寝たらダメかな。ダメだよね……。
ふと、壁に飾った絵を見つめる。洸がくれたタトゥーのデザイン画、薔薇の蕾。夢と希望。
「……洸」