初恋は海に還らない
────何度でも思い出す。忘れられないあの夏を。
私は洸を生かすことは出来なかった。
けれど、洸の人生の最後に、何かを残せたのかな。もう話すことは出来ないから、知ることができないけど。
あの優しく大きな手のひらに触れることはもうないし、声や笑顔は日に日に記憶から薄れてしまっている。
だけど、あの時感じた恋の痛みは、ずっとずっと、私の胸に燻り続けている。
永遠に燃え盛ることはなく、潮風に吹かれ、けれど消える気配はない。
苦しくて愛おしい、この想いと共に生きていく。
──伝えられなかった、あの初恋は、まだ海に還らない。
『初恋は海に還らない』おわり