初恋は海に還らない
こんな終わり方をするとは思わなかった。もっと心の準備をして、自分のタイミングでいきたかったのに。
そういえば、来月好きな作家の半年ぶりの新刊が発売されるんだった。それだけは心残りだな。
けど、もう遅い。私は襲い来るであろう衝撃と息苦しさに身構え、そっと目を閉じる。
「──っにしてんだよ」
波の音を割くように、掠れた低音が響く。私のTシャツの裾が引っ張られ、堤防の内側に思い切り尻餅をついた。
それと同時に、身体中が脈打つように震え出し、呼吸が荒くなる。これは恐怖のせいだ。
覚悟したのに、何でこんな──。