初恋は海に還らない




「子供が、こんな夜中に何やってんだ」



 不機嫌そうな声が頭の上から降ってきて、ゆっくりと顔を上げる。すると、こちらを見下ろすように、甚平姿の背の高い男が立っていた。


 短髪の黒い髪、涼しげな目元、耳にはピアスの穴が沢山空いていて、煙草を咥えている。多分二十代後半くらいだ。


 こんな時間に何故こんなところに人が? 不良だ、ヤカラだ。喉から引き攣るような音を出した私に、不良は煙を吐き出しながら器用に舌打ちをする。


 
「お前分かってんのか。死ぬところだったんだぞ」
「あ……」
「それとも、死のうと思ってたのか?」
「…………」



 まるで見透かすようなその言葉に、私は目を見開き固まる。



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