初恋は海に還らない
「俺は洸、呼び捨てでいい」
「……聞いてない」
「とにかく、今日は俺に見付かったのが運の尽きだ。とにかく帰って今日は寝ろ」
「…………」
「ジジババ叩き起こすぞ」
「……分かったから」
「よーし、んじゃ帰んぞ」
再び私の腕を掴み、男──洸は歩き出す。私は抵抗することをやめて、腕を引かれるがまま歩き出した。
行きとは違い、二つの足跡が砂浜に続く。私を誘っていた波の音は小さくなっていた。
雲の隙間から顔を出した月が、静かに私達を見下ろしている。
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