初恋は海に還らない
「あー、だいぶ濡れたな」
すると、洸は突然シャツをガバリと脱ぐ。確かに濡れたし、私も脱ぎたいくらいだけど。
ちらりと横目で洸の身体を見て、私は固まった。
「え……」
「ん? あー、これ?」
「な、な、なにそれ」
────筋肉質な洸の背中には、大きな虎の刺青が入っていた。色はついておらず、黒い線のみで彫られた凶暴な肉食獣は、まるでこちらを睨みつけているようだった。
その迫力に、私は顔を青くして思わず後ずさる。
「えっ!? ヤクザ!?」
「ちげーよ。和彫じゃねーし、トライバルタトゥーってやつ」
「やんちゃしてたから……?」
「まぁヤンチャはしてた」
「怖い怖い」
私がひたすら引いていると、洸は楽しそうに薄い唇の口角を上げた。そして口を開く。