初恋は海に還らない



 どれも色の配色から形まで、何故か心を掴まれる。そして、その中で一際目を引く物を見つけた。



「薔薇の、蕾? これすごく好き」
「お、目の付け所がいいな。けどあんまり客からは人気がないんだよ。みんな蕾よりも開いてる薔薇が良いみたいで」
「そうなんだ。だけど私はこれが良いな」
「まぁ確かに、今の都に合ってるかもな」
「え?」



 私に合うという発言が理解出来ず、隣からカタログを覗き込んできた洸に視線を向けると、柔らかく口角を上げていた。



「薔薇の蕾の花言葉は、夢と希望」
「いや、逆に合わなさ過ぎだから。今の私は夢も希望もないでしょ」
「は? これからだろこれから」
「えぇ?」
「せっかく生き長らえたんだ。夢も希望も、探してみようぜ。それが都がこの先幸せになる為のヒントになるから」
「……そうなの?」
「そうそう」



 洸は当たり前のように二、三度頷く。


 一番の復讐は、わたしを無意味に傷付けた人間達から離れ、幸せになること。


 幸せってなんだろう。夢や希望ってなに? 今の私を形作っているものはなんだろう。暇さえあれば物語の海にどっぷり沈んでいるだけの私の幸せ──。



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