初恋は海に還らない
薔薇の蕾のデザインを見つめ、考え込んでいると、洸は再び口を開いた。
「彫ってやろうか」
「え、嫌だよ怖いもん」
「勿体無いなー、これでも俺、予約の取れない彫り師なんだぜ?」
「彫るのは嫌だけど、このデザイン画は欲しい」
隣に立つ洸を見上げると、とても驚いた表情をしていた。
そしてしばらく沈黙が続き、どうしたのかと口を開こうとしたら、突然両手で髪の毛を掻き回された。
文句を言おうとその手を払い洸を再び見上げると、とても嬉しそうに、優しく笑っていた。私はその表情を見て、何故か胸が高鳴る。
「お前が地元に帰る日にやるよ」
「……本当に?」
「ああ、約束する」
どきん、より大きく胸が鳴る。