初恋は海に還らない
そうか、だから海に行った時も洸はあちこちから声を掛けられてたんだ。顔もキツイし、仕事柄怖く見られることもありそうなのに、街の人との距離が近い。それは洸の人柄がそうさせてるんだ。
理玖は頬杖をつき、私を上目遣いに見上げる。
「都って、都会から来た感じ?」
「まぁ、そうなるかな」
「へぇ、いいな」
「なんで? 私はここいいと思うよ。海が近くて気持ちいいし、何より人が温かいから」
「海が近くていいことばっかりじゃねーよ。潮風で家がダメになることもあるし、チャリだって錆びる。冬は吹き付ける風のせいで鬼のように寒いし」
「うわ、確かに。けど都会だって人でゴミゴミしてるし、空気は汚いし電車はいつも混んでるよ」
「お互い、ないものねだりってやつか」
「たしかに」
人は無い物ねだりで夢を見がちだ。だからこうやって実際に話を聞くと、デメリットを知れていいのかもしれない。