初恋は海に還らない
理玖は固まった私を見て、不思議そうに首を傾げた。
「……私、今不登校で。気晴らしで夏休みいっぱい祖父母に預けられてるの」
「え、そうなの」
「うん。なんか色々あって、疲れて行けなくなっちゃったんだ。だから進路のことは不登校問題が片付いてから」
「……ああ、そっか」
「だけどいいな。街の人達がみんな家族みたいって……私は親でさえ言いたい事がなかなか言えないや」
不登校になった時、両親にどうして? と理由を聞かれ、謝ることしかできなかった。不登校になったことが恥ずかしかったし、何よりいじめられていたという事実を知られたくなかった。自分が他人から嫌われる人間だと知られ、幻滅されたくなかった。心配掛けたくなかった。
こんな私にも、誰か一人でも心を開ける人が居たら違ったんだろうか。それとも、周りに合わせる努力をしたほうがよかったんだろうか。そしたら、こんな状況には──。