初恋は海に還らない




 気持ちがどんどん下を向き、俯くと、理玖のなんでもないような声がした。



「だったらこれからは、俺に話したいあったら話せば」
「え」
「もう洸には話してるんだろうから、同年代代表ってことで俺。連絡先交換しよ」
「待って、けど私、そんな面白味ある人間じゃないし」
「そんなの求めてねーよ。けど都はクラスの女子みたいなズケズケした感じもないし、俺は話しやすい。だから友達になりたい」



 私にスマホを取り出させ、チャットアプリからQRコードを読み取ると、理玖は気怠げな表情は崩さぬまま、ニマリと笑った。



「だから都も、ちょっとしたことでいいから連絡してきていーよ」



 ふわりと夏特有のぬるい風が私達の間を通り抜けていき、理玖の髪の毛が揺れる。


 ちょっとしたことでいいから、連絡してもいい人なんて出来たことがない。心がじわりと温かくなる。



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