初恋は海に還らない
「──あの二人は、幼馴染でいつでも二人一緒だったんだよ。俺が最初に洸に出会った記憶も、横に彼女が居た。お互いが居て当たり前、口には出さないけど、二人も周りの人間も当たり前に洸達のことをそう思ってた」
「…………」
「彼女が迷子になった時、見つけてくるのは洸だったし、洸が荒れてる時のストッパーも彼女だった。大人になってもずっと二人は支え合ってたし、洸がプロポーズしたって聞いてやっとかって思ったくらい」
「……そっか」
「だから、そんな二人の片割れが居なくなる、その痛みは計り知れない。彼女があの海に落ちて亡くなってからの洸は、とても見ていられなかった。仕事をする以外ずっと篭りっきりで、街のみんなもずっと洸を心配してた」
理玖の声には温度がなかった。
私は、当たり前に洸の隣に居た存在のその大きさを、じわじわと目の当たりにして動揺する。
「だから、洸の苦しみとか悲しみは、俺達がどう頑張ろうと取り除けるものではない」
そんなこと言われなくとも分かってる。そんなに大きな存在を失くして、無理に立ち上がれなんて言えるわけがないし、言うつもりもない。