初恋は海に還らない
洸は後悔していた。自分がプロポーズしなければ、指輪を渡さなければと。
けれど、彼女は洸からの指輪が大切で、一人それを探しに行ったんだ。あげなければよかったなんて、そんなわけない。
その時、私の脳裏にある光景が浮かんだ。
「……あれ?」
私は海に飛び込もうとしたけれど、あれは落ちたが正しい。だってあの時私は岩場の隙間になにかを──。
「…………あっ」
「やっぱりショックだろ? だから聞くなって……」
「理玖、手伝って欲しいことがあるの」
「は?」
「今日自転車で来たでしょ? 後ろ乗せて」
「なんで」
「後で説明する! 着替えるから出て!」
私は立ち上がり、理玖の背中を押して扉を閉めた。
そうか、あの日私が見たのは──。
***