初恋は海に還らない
洸が私を認めてくれたから、私はこの先も生きていこうと思えたの。
学校に行けない、自分のことを恥ずかしいと思っていた私を肯定してくれた。
逃げていい、死ななくていい、違う場所で幸せになっていいと言ってくれた。
だから、私も少しでも洸の力になりたい。
その時、店のドアがゆっくりと開いた。そこには、出会ったころのように表情が抜け落ち、気怠げにタバコを咥えた洸が立っていた。
「……都、なんだよ。理玖は」
「理玖は、家に帰った」
「…………悪い、ちょっと今日は、人と話す気分じゃねぇんだ。……ってお前、何でそんなに濡れてんだよ。早く帰って風呂入れ」
ずぶ濡れのわたしに驚きつつ、手早く私を帰そうとする洸に、胸がずきりと痛む。
けれど、これを渡すまでは引けない。私は洸に向かって手を握り差し出した。