初恋は海に還らない
バタンと後ろでドアが閉まり、大雨だったあの日のように、静かな店内に二人きりになった。
洸はタバコを灰皿に押し付け、指輪を見つめている。
「……洸、それ、婚約者さんに返してあげて」
「っ、けど、これがあったから……アイツは……」
「止められても探しに行くくらい、大切な物だったんだよ。だからあの日の夜、光って指輪が居場所を教えてくれたのかもしれない」
「…………」
「婚約者さんは、洸のせいだなんて絶対に思ってないよ。だって洸は、こんなにも優しいんだから」
洸は指輪をぎゅっと握りしめ、胸に押し付ける。洸の肩が震え、顔から雫がぽたぽたと床に落ちて染みを作った。
──ああ、好きだ。この人が好きだ。