君の隣だから、笑顔。〜あまのじゃく男子は、いつもイジワル〜
生徒会と委員会
「今日は、クラスの学級委員を決めたいと思う」
先生がメガネの端を、カチ、と鳴らした。
入学式の次の日、初めてのLHR。
まだ新しい生活になれない私たちは、落ち着かなくて、騒がしい。
先生は、何人かの人が反応したのを見て続けた。
「まずは委員長と副委員長を決めたい訳だがーー…やりたい人、いるか?」
先生が微妙な表情で、みんなに聞いた。
その途端、それまでザワザワとして騒がしかった教室が、しぃーんと静まり返った。
そりゃそうだよ、やりたがる人なんて滅多にいないもん。面倒くさいし。
「私、やりたいです!」
とそこへ、「はいっ!」と元気な声で立候補した人がいた。
驚いて目を見やると、それは優空ちゃんだった。右にしたポニーテールを揺らして、利発そうな目で先生を見つめている。
優空ちゃんて…すごい。
確かに、入学初日でクラスメートの名前覚えてたしね。小学校でも、委員長とかやってたんだろうな。
「お、瀬城さんか。いいね、他にやりたい人は?」
先生が嬉々とした表情でチョークを手に取った。
普通は立候補する人なんていないもんね。それが一瞬で半分決まったら、嬉しいに決まってる。
「瀬城さん、とりあえず前に来て」
「はい!」
優空ちゃんが先生に呼ばれ、席を立って教団の段を上がった。
自信たっぷりに歩くその姿が、ちょっとかっこいいな、なんて思ってしまった。
「あと、もう一人だな…やりたい人は……」
優空ちゃんの立候補に驚いて、一斉に話し出していたクラスメート達が、一斉に口をつぐんだ。
教室が、またまた静かになった。
先生が、「だよなぁ」とつぶやいて、頭を抱えた。
「じゃあ、そうだ、推薦は?」
しぃーん…誰も、手を挙げない。でも、また、さっきと同じ声が響いた。
「先生、新入生代表だった瀬凪くんがいいと思うんですけど」
そういったのは、やっぱり優空ちゃんだった。
その途端、さっきまで物音一つしなかった教室がぶわぁぁっと湧いた。
「瀬凪、瀬凪いいやん!」
「お前、新入生代表だろー?」
男子から、瀬凪への野次が次々ととぶ。
「はぁぁ?」
それまで興味なさげに机に突っ伏していた瀬凪が、突然の推薦に飛び起きた。
「おかしいだろ、新入生代表だからって?」
「瀬凪くんが適任だと思うの!」
優空ちゃんが、瀬凪に語りかけた。
先生は、早く決まって欲しいようで、優空ちゃんの提案にいたく感動したみたい。
……ここで瀬凪がやらなかったら、先生可哀そう。
「瀬凪、やったらどう?」
だから私が言うと、瀬凪は「え」とつぶやいた。
「やったらかっこいいでしょ」
先生の助けになるし。
そういう気持ちを込めて言うと、瀬凪はぐっとのどを詰まらせた。……そして、数秒後。
「……はぁ。せんせ、しょうがないんでやってやりますよ」
「おぉー! 瀬凪、男前ー!」
「かっこいいぞー!」
またまた野次がとんで、瀬凪は照れくさそうな顔をしていた。
と、いうわけで。
このクラスの委員長は瀬凪希壱、副委員長は瀬城優空と決まったのでした。