君の隣だから、笑顔。〜あまのじゃく男子は、いつもイジワル〜
「そっれにしても、これ、酷い絵だねぇ! おまけに、肝心の数学の公式は何一つ書いてないし」
佳那が、お腹を抱えてケラケラ笑った。佳那の視線の先にあるのは、私のノートの1ページ。
「佳那……あなたまでそんなこと言うなんて、裏切られた気分」
私は、ゲンナリした顔で佳那を見た。
休み時間、チャイムが鳴ると同時に、私は佳那の所に飛んで行った。
それでさっきのことを佳那に愚痴ったら、佳那が私の絵を見たいって言うんだもん。笑わないでよって、ちゃんと言ったのに、佳那、ひどい!
「だってぇ、しょうがないじゃん。瀬凪がああ言ったのも、理解できるよ。瀬凪ー!」
佳那は目尻に溜まった涙を吹きつつ、何と瀬凪に呼びかけた。
「瀬凪、あなたは悪くないよ、こんなんじゃねー」
「ちょっ…なっ……佳那!」
羞恥心にさいなまれて、落書きされたノートを佳那に向かってバッサバサ叩きつける私。
それを見た瀬凪は、すぐに察したみたい。すぐに私に向かって言ってきた。
「お前、もっと絵が上手くなってから落書きしろよ。お前のヘンテコな落書き見せられて、集中できねぇんだ」
「はぁ?! 見せてないし!」
私の絵を馬鹿にしないでよ。下手だから、練習してるのに!
私は昔っから、図工は出来るのに美術はできない子どもだった。
どういうことかっていうと、工作は得意だけど、絵を描くのは下手ってこと。だから図画工作の成績は、別に悪くもなかった。プラマイゼロってこと。だから大して問題視したこともなかったんだけど……。
優空ちゃんは、絵が、上手い。
副委員長でもある優空ちゃんの、生徒会に提出するクラス絵を見た時、私は思った……ヤバい、私の絵、死んでる、って。
「私が絵、教えてあげるわ、如月さん」
出席簿を書いていた優空ちゃんが、不意に顔を上げて、私に向かって親指を立てた。
「そういや、瀬城って絵上手いよな」
瀬凪が優空ちゃんに言うと、優空ちゃんは「そんな事ないわ〜」と、謙遜したように言った。
「瀬凪くんのためにも、如月さんに頑張って教えるわね」
瀬凪くんのため……って?
優空ちゃんの言葉が何となく引っかかって、私は少し首を傾げた。