君の隣だから、笑顔。〜あまのじゃく男子は、いつもイジワル〜

「弥優、ホントに、野山くんてかっこいいの!」
生徒会から戻ってきた佳那が、私の前で力説し始めた。

「だって、さっきだって迎えに来てくれたし、しかもあれって野山くんの独断だったの! 私のせいで野山くんまで遅れたのに、全部自分のせいですって言うんだよ?」
佳那は、うっとりと手を合わせた。

「うわ……紳士だ」
後輩のミスまで自分を使ってカバーするなんて、優しすぎ。

「ほんっとに! でも、女子ってみーんなそういう人が好きなんだよ……モテるんだよ……野山くん」
そう言うにつれて、さっきまでパンパンの風船みたいだった佳那が、どんどんしぼんでく。
それが傍から見てると面白くて、ちょっと笑っちゃう。
……おっと、いけない。足を踏んずけられそうになって、私は咳払いした。『私は笑ってなんかいませんよ』のスタンスだ。

そんな風船が、また、空気を溜め込んでバーン! ……飛んでった。
「みんなにもソウイウコトしてるんだよ! 一人一人に優しすぎて、誰が好きなのか分かんないよね!」

「そもそも野山くんて好きな人いるの?」

佳那は、伏し目がちになって、ロートーンで続けた。
「……い、いるでしょ。多分。いてもいなくてもヤダけど」

「ねぇ、佳那ってさ……」
そんな風船を、撃ち抜く私!

「野山くんのこと、好きなの?」

はい、見事撃ち抜いた!
そう私に指摘されて、佳那は茹でダコみたいに真っ赤になった。ぷしゅー、と音を立てて、佳那風船から、空気ではなく理性が抜けていった。

「あははっ! 図星だね? あははははっ!」

そんな佳那が可愛くて、もう、笑いが止まらない。佳那はさらに真っ赤になって、べしべし私の背中を叩き出した。

「痛い、痛いってばぁ……あははははっ!」
そうされると余計笑えてきて、それは佳那の火に油を注ぐだけで。…自爆だった……あは。
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