君の隣だから、笑顔。〜あまのじゃく男子は、いつもイジワル〜

「ねぇ…優空ちゃん……」

今日…私は……死ぬ。

というのはもちろん冗談だけど、決して大袈裟に言ってるわけじゃないの。

なんでかって、そりゃ……。

「何でマッチなんかすらなきゃいけないの!?」

他でもなく、実験で使うマッチのせいだった。
マッチっていうのは、箱でこすって火をつける、いわば火起こしの道具だ。

でも私は、このマッチというものがどうしようもなく苦手なの。
だって…こする時の力加減が怖いし、それで怯えて下に向けたりなんかしたら、アウト。
火が指にかかるじゃない!
それにこの、マッチにはトラウマがあるんだ。

あれは、小学四年生の時……。


小学四年生の理科実験の時間、私はマッチなんて聞いたことも無い、『そーゆーもの』とは無縁の人だった。

だから、火の起こし方なんて全く知らなかったのよね。
先生に言われた通り、おっかなびっくりすってみたのに、ビクともしない、謎の棒。
多少畏怖を感じながらも、苛立って勢いよくこすってみたら……。

いきなり、

ボオッ! と、赤いものが棒の周りで燃えた。

「きゃあっ!」
もちろんそれが火だっていうのは分かっていたけど、余りにも突然だったから、私はパニクってしまった。
それに追い打ちをかけるように走った、親指の、チクッという痛み。

恐る恐る視線を落とすと、自分の親指が火で燃えてたの!

そうしたら慌てた先生が来て、
「マッチを下に向けて持っちゃダメって言ったでしょ! ほら、秋元さん何してるの、濡れ雑巾!」
と、慌てたように言った。

その言葉を聞いて、マッチを下に向けたせいで指が火に巻き込まれたんだと、遅ればせながら理解した私なのだった。



…ということもあって、マッチは私にとってトラウマだらけのアブないモノ!
もう一度見ることになるなんて……なんて災難なんだろ?
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