君の隣だから、笑顔。〜あまのじゃく男子は、いつもイジワル〜
私とは正反対に、瀬凪は、意気揚々とマッチを1本、箱から取り出した。

そして、何のためらいもなく…マッチの先を、箱の側面に当てた。そして、シュッと言う鈍い音がして……、

「…っ!」
思わず閉じてしまった目をあけると、赤い炎が、マッチの上でらんらんと光っていた。

「わ…すご」
そう漏らすと、瀬凪はフフンと得意げに胸を張った。
「見た、俺の手さばき! 瞬きする間もないようなこの仕草!」
「…瀬凪、それくらい僕だってできるよ」
瀬凪の言葉を聞き、なぜだか鐘原くんがムッとしたようにマッチの箱を奪い取った。

…男の子の謎の意地って言うやつ、かな?

鐘原くんはなんの躊躇もなく、数秒後には火のついたマッチを手に持っていた。
「おぉ……! すごい!」
「すごくないって……」
そんなことを言いながら謙遜する鐘原くん。どっかの誰かさんとは、大違いだね。
私が『尊敬』の目で鐘原くんを見ると、瀬凪が「なんだよ」と、つぶやいた。
「せ、瀬凪くん、あなたの方が何倍もすごいわよ!」
瀬凪のフォローに入る優空ちゃん。さすが、副委員長だ。

「すごくない。じゃあ次、瀬城」
瀬凪がふてくされたように言った。

そんなに悔しいのかなぁ……。って、次?!

「え、まさか、全員マッチやるの?!」

私が叫ぶと、優空ちゃんが首を傾げて私を見た。
「みゆうちゃん、先生の話聞いてた?
当たり前じゃない」

あ、あ、当たり前?! マッチ全員する必要あるの?!

私は唖然として、声にならない叫び声を上げた。

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