君の隣だから、笑顔。〜あまのじゃく男子は、いつもイジワル〜

「えへん…」
佳那は、「この話は終わり!」と、咳払いして続けた。

「とにかく、ハチマキ交換の伝統あるじゃん? でも、この学校ではね、ハチマキじゃなくて、ゼッケンを交換するんだって」

「ゼッケンを?」
私は目を丸くした。

そういえば体育祭では、ハチマキの代わりに、一人一つゼッケンが配られるんだっけ。

「ハチマキの代わりに、ってことだよね。そのまんまの意味だ」

ハチマキが無いから、ゼッケンを交換する…ってことでしょ?

「そう。あー、野山くんと交換したいなぁ……」
そう言って、1人できゃーきゃー騒いでいる佳那。…やっぱ、可愛い。

「ダメ元でも、お願いしてみたら? 佳那は可愛いんだから、上目遣いで、『お願い♡』みたいな感じでさ」

私が冗談で指ハートを作ると、佳那はダンッ! と手のひらで机を叩いた。

「はぁぁ?! そんな恥ずかしいこと出来るわけないじゃんっ! 第一、野山くんが私なんかを可愛いって思うわけないし!」

「ご謙遜を〜」
私は、手をひらひら振った。こんなに可愛い佳那を憎めないのは、彼女が無自覚なせいだ。

「もー、からかわないでよ。そーいや、弥優は好きな人いないの?」

「え、いないよ。まだ新学期始まってちょっとじゃない」

私が首を振ると、佳那は「つまんなーい」とため息をついた。
しかしすぐにぽんと手を打って、席で未提出課題をやっていた玲亜ちゃんに体を向けた。
そして、興味津々な目で玲亜ちゃんを覗き込む。

「玲亜ちゃんは? いる? 好きな人!」

「……さぁね」
玲亜ちゃんは、意味深にそう言って微笑んだ。……オトナの対応だった!

「生徒会長とか、ワンチャンあるかなぁ」
佳那はそう言い、首を傾げた。そして、ちょっと考えて……ハッとしたように頭を上げた。

「あっ、野山くんでも全然いいからね?! むしろ玲亜ちゃんの方が可能性あるくらいだし!」

「違うってば!」
玲亜ちゃんは、少し顔を赤らめてぶんぶんと首を振った。

「佳那ちゃんの恋路の邪魔はしないし!」

「こ、恋路って! もう、玲亜ちゃんまで!」

佳那は腕をぶんぶん振って反論していたけど、いくらか嬉しそうに見えたのは私の勘違いかな?
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