君の隣だから、笑顔。〜あまのじゃく男子は、いつもイジワル〜

「…何も、言えない、んだね」

しばしの沈黙の後、佳那がか細い声で、そうささやいた。目に浮かんだ涙の狭間から見える彼女は、私と同じように泣きながら、それでいて諦めたような顔をしていた。

「だって……、佳那が……」

言う言葉も見つからず、何も言えない私。佳那の言葉が、これほど信じられなくなるなんて…、佳那が、私のことをあんな風に思っていたなんて。

「もういいよ、弥優。私のことが、信じられないんでしょ? 優空ちゃんの方が…大事なんだ!」
佳那が、私に向かって叫んだ。
「あ……っ」
そう叫ぶ佳那は、本当につらそうで…何か、訴えているようだった。

そんな顔、しないでよ。
私が、悪者みたいじゃん。
あんなこと…言ったくせに。

耐えきれなくなって目をそらすと、佳那は「……っ」と、声も出ないようで、そのまま駆け出して言った。

「…佳那っ」
一瞬、佳那へと1歩を踏み出した、が……。

『秋元さんが、言ってたのよーー『弥優は、大して可愛くないし、利用しやすいだけ』って』

ためらいがちにそう言い放った優空ちゃんの顔が脳裏に浮かんだ。
優空ちゃん、優空ちゃん……。
優空ちゃんは、嘘なんてつかない……きっと……。

そう思うと、自然と足は止まってしまっていた。
残ったのは、いつの間にか私の顔を流れる涙だけーー

「…如月?」

突然名前を呼ばれ、思わず振り返ると、帰りらしい瀬凪が立っていた。

「…あっ」
泣いていたことを思い出して、すぐに顔を背ける。

何でこんな所に来ちゃうの、瀬凪。こんな馬鹿みたいな顔、見てないよね?!

「泣いてる……?」
瀬凪の戸惑ったような声を聞き、私はぎゅっと目をつぶった。

やっぱ、見られた。
泣き顔なんて、絶対からかわれる……!
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