君の隣だから、笑顔。〜あまのじゃく男子は、いつもイジワル〜
瀬凪……いつもと違ったな。
気がついたら、自分の部屋にあるベッドの上に寝転んでいた。
ぼーっとして、ただ天井を見つめながら、立ち上がるのを手伝ってくれた、瀬凪の手の感触を思い出した。
「あれでも…慰めてくれた、のかなぁ」
瀬凪がいつも通りからかってこなかったことは、私にとってかなりびっくりした事だった。
出会い初日にやまんばなんて言ってきたサイッテーなやつ! そう、ホントに最低。嫌な奴。
……だけど。
ちょっと、見直した、かも。
だって。
ほんっとーに嫌な時は……からかってこないって、わかったから。
どうして、あそこに現れたわけ。あのタイミングで。ちょっと、頼っちゃうじゃん。……私の中では、サイテーな奴、だったはずなのに。
ーー佳那と、ケンカした。人生で、初めて
それは、心にぽっかりと穴が空いたような、なんとも言えない感覚。こんなに苦しいのは、なんで…?
あれは、佳那が悪いって、思ってる。思おうとしてる。私に否なんか無いはずだって! だって、私は悪口を止めて…、正義を守った。いい事をしただけ!
…………。
そう心を説得しようとしたのに、やっぱりそれでも罪悪感が、私の心を蝕んでいる。
ーー今からなら、間に合うんじゃない?
ふと、心の奥底で、そんな声が聞こえた。
ーー今から佳那に、謝れば……無かったことに、できるんじゃない?
ベッドに放り投げていたスマホを手に取り、Limeを開こうとした。
でも、表示されている通知を見てーー私は、手を止めた。
「ゆら、ちゃん」
私の手を止めさせたものーーそれは、優空ちゃんからの通知だった。
思わず、震える指で通知をタップした。
【みゆうちゃん。さっきは本当にごめんなさい。秋元さん、私のせいで怒っていたのよね?】
「ゆ…ら、ちゃん」
冷たくなった唇を震わせ、私は小さな嗚咽を漏らした。
「佳那は、あんなこと…うぅ、言ってた、のに。なんでこんなに、優しい……の」
キーボードをタップして、文面を打つ。
何度も誤字って、私は体全体が震えていることを知った。
[大丈夫だよ、優空ちゃん、私こそごめん。佳那、ちょっとおかしかったし]
すぐに、返事が返ってきた。
【でも、辛いでしょう……混乱させて、ごめんなさい。でも、本当のこと、知っておいてもらいたかったの。】
ホントは……信じたくなかった。
佳那が、私のことを悪く言ってるとか。そんなこと、絶対に。
でも、こんな健気な優空ちゃんを見て、私の気持ちからはそんなことは吹っ飛んでしまった。
優空ちゃん、優空ちゃん……優空ちゃんは、私の友達だ。
ーーだから、その優空ちゃんを悪くいう佳那は、許せない。
[なんで優空ちゃんが、謝るの? 私、優空ちゃんの友達で本当に良かったって思ってる]
【ふふ、みゆうちゃん。心配しなくて大丈夫。みゆうちゃんには、私がついているんだから。……ね?】
その返信を見た私は、途端にほっとして、そのままベッドで寝てしまった。