六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【リメイク版】
琴ちゃんを遮って聞こえてきたのは、今日最初に聞いた声。
「こ――雪村くん、なに?」
答えたのは琴ちゃんだった。
「……三科に用はない。司、数学の教科担当だろ? 厳島(いつくしま)先生が探してた。手伝ってほしいことがあるって」
「そうなの? じゃあ琴も一緒に――」
「なんか意見聞きたいんだと。飯も持って行った方がいいんじゃないか? あと、三科は呼ばれてない」
あ、そうなんだ。
それならお弁当の中身を知られずに済みそう。
先生の用事が終わったら、一人でどっかで食べちゃえばいいよね。
「わかった。すぐ行く。琴ちゃん、凛ちゃん、今日はごめんね」
「ひにふんな(気にすんな)」
既にもぐもぐしながら答えて、喉を鳴らした凛ちゃん。続けて口を開く。
「野郎の教師なら咲雪と二人きりとかにはさせんがな。あ、姐(ねえ)さん先生が女でも油断すんなよ?」
「なんの心配してるの。じゃ、行ってくるね」
開く前だったお弁当の包みを持って立ち上がる。
「数学科準備室でいいのかな?」
「そう聞いてる」
晃くんに確かめてから、校舎内に戻った。